週末、バルコニー探訪

with Balcony編集部の女性スタッフが、
バルコニーづくりのヒントを求めて
街で見かけた気になるバルコニーやテラスを訪問!
自宅のバルコニーにも
活かせそうなアイデアを発見&ご紹介します。

Vol.05非日常へ誘う、
水の縁側・ガラスのバルコニー

「自宅のバルコニーづくりの参考になるアイデアを探して……」そんなコンセプトでお送りしているバルコニー探訪。でも、たまには自宅とかけ離れた、非日常なバルコニーも見てみたい! そこで今回は思い切って都内から新幹線で足を延ばし、海と温泉の観光地、熱海へやってきました。

ATAMI海峯楼

お目当ては、世界的建築家の隈研吾氏が手掛けたスモールラグジュアリーホテル「ATAMI海峯楼」。ウォーターバルコニーと名付けられた、まさに水に浮かぶバルコニーがあるとのこと。水に浮かぶって、一体どういうこと?? 期待に胸を躍らせながら、ひっそりとした佇まいのエントランスへ……

バルコニー=縁側、という発想。

「ATAMI海峯楼」は、客室がたった4部屋というアート旅館。ウォーターバルコニーは、上階の二部屋を利用されるお客様用のダイニングスペースとして使われている空間です。案内されるままに進んでいくと、透明な廊下を進んだ先に、バルコニー部分に突き出すように設けられたバルコニーが! なるほど、バルコニー全体に水が張られて、そこにガラス張りのダイニングがあることから、“水に浮かぶ”と言われているのですね。それにしても、この空間のインパクト、体感すると想像以上。ホテルの伊藤支配人曰く、この空間は「ガラスの箱」。まさに、透明な箱に入って、水にぽっかりと浮かんでいるかのようです。

お話を聞くと、この建築には日本の「縁側」が深く関わっているそう。「ATAMI海峯楼」のすぐ隣には、ドイツ人建築家のブルーノ・タウト氏が手掛けた「旧日向別邸」(1936年/重要文化財)があり、そこには京都の桂離宮からインスピレーションを受けた縁側が設けられています。実はこの水を張ったバルコニーは、隈氏がその縁側とタウト氏へのオマージュとして設計したとか。隈氏の作品集の中でも、縁側というコンセプトによって海とホテルをつなぎ、さらにそこに水という自然のエレメントを張り巡らすことで、「建築という固く、重たい存在を、やわらかく、やさしいものへと変換しようと試みた」と書かれています。

水の縁側ウォーターバルコニーからの眺め
ウォーターバルコニー

水の「ゆらぎ」が癒しを運ぶ。バルコニー・バスに興味津々!

水の縁側をさらに堪能したいならと、続いて案内していただいたのは客室。こちらも足を踏み入れると、目の前はガラス一面のワイドビュー! 海との間には水の縁側。水面のゆらぎが室内に反射して、天井に光が踊ります。バルコニーはほとんどリムのないつくりなので、ソファに座って目線を下げると、海とバルコニーがほぼ一体の眺めに。そして……なんと、このバルコニーには、ジャグジーがついているのです。なんという贅沢!!

客室ジャグジー付お風呂
バルコニーから見たお風呂お風呂

お湯のゆらぎ、バルコニーのゆらぎ、そして波のゆらぎ。開放感の中で浸る湯船は、お風呂好きの日本人にとってこの上ないしあわせです。最近は、マンションでも浴室とバルコニーが連動した間取りを見かけることも多くなりました。明け透けな浴室に抵抗のある人もいるかもしれませんが、目隠しの工夫などはどうにでもできるもの。マンション購入を検討中の人がこうした空間を目の当たりにしてしまうと、お風呂とバルコニーの関係性もマンション選びの要チェック項目の一つになってしまうかも……? もしすでに自宅の浴室に小さなバルコニースペースがついているなら、外と連動した楽しみ方をぜひ見つけてほしいですね。

透明素材を多用して、空間に広がりを。

しつらえの面で「ATAMI海峯楼」がこだわるのは、なんといっても素材感。ガラスをはじめ、木や大理石などの有機物を使うことはもちろん、アルミなど軽やかで景色をじゃましない素材が選ばれています。
その中でもやはり、注目したいのはガラス素材。最初のウォーターバルコニーは、テーブル、チェア、そして花器に至るまでほとんどすべてがガラス製。透明なガラスの家具は、空間を広く見せてくれるメリットもありますが、使うのに少し緊張感を持ってしまう場合も。でも、こうして潔くガラス素材でまとめると、反射や光の具合で空間の“非日常感”がより一層高まることがわかります。

自宅にこうしたスタイルを取り入れる場合、バルコニーでガラス素材の家具を使うのは危険もあるのであまりおすすめできませんが、ポリカーボネート製の透明なガーデンファニチャーでも様々なデザインがありますので、そうしたものを探してみてもいいかもしれません。また、透明にこだわらなくても、床材や腰壁、室内のフローリングなどのカラーを統一するだけでも、空間に広がりが。バルコニーから望む景色の色味に合わせれば、環境との一体感も生まれます。

自宅のバルコニーで、と考えると制限されることもたくさんありますが、たまにはこんなラグジュアリーバルコニーを体感して、バルコニーという場所そのものの価値や可能性を改めて考えてみたい……。そう思える贅沢な探訪でした!

客室からの眺め

取材協力

ATAMI 海峯楼