空調新製品『クウチョウハイパーCH』
ふくしま医療機器開発支援センターにて採用
印刷版PDF(会員限定)復興への重点プロジェクトである医療関連産業集積を一層加速させるための拠点として、福島県が整備を進めてきた『ふくしま医療機器開発支援センター』。本センターは、医療機器の安全性評価、企業のマッチングやコンサルティング、医療従事者のトレーニング等を総合的に実施し、医療機器の開発から事業化までを一体的に支援する医療機器開発支援拠点となります。
インタビュー:2016年9月28日 株式会社久米設計 環境技術本部 主管 伊藤 欽章さん / セコムエンジニアリング株式会社 橋本 勲さん
工事のあらまし
ふくしま医療機器開発支援センターは、大型動物を使用した生物学的試験(埋植試験等)により海外の基準にも適合した医療機器の安全性評価が行える国内唯一の公的試験機関となります。
規 模:建築面積:約6,077m2、延べ面積:約11,529m2
発 注 者:福島県
設 計 者:株式会社久米設計
空調設備工事:セコムエンジ・内藤・エヌエスJV
本センターの空調設備配管として、積水化学の新製品であるクウチョウハイパーCHが採用。この度は、設計を担当しました久米設計 伊藤さんと、空調設備を担当しましたセコムエンジニアリング 橋本さんにインタビューさせていただきました。
新技術の空調配管クウチョウハイパーCH!
- ふくしま医療機器開発支援センターのプロジェクトの概要をお聞かせください。
- 伊藤氏 福島県は国内屈指の「医療機器生産県」です。医療機器受託生産、医療用機械器具の部品等生産はともに全国トップクラスであるほか、オリンパスなど大手医療機器製造企業の生産拠点が数多く立地しています。
県ではこのような特徴を活かし、復興への重点プロジェクトとして、産学官連携による医療機器関連分野の集積を図る『うつくしま次世代医療産業集積プロジェクト』を進めています。
その中心施設として郡山市富田町の県農業試験場跡地に「ふくしま医療機器開発支援センター」が造られました。
本センターのすぐ近くにも復興住宅がまだあり、本当の意味での復興は、まだまだ道半ばです。
本センターは、国家戦略において重点施策と位置付ける医療産業分野の研究開発拠点として、産業交流や関連企業の進出、さらには雇用の拡大など、復興への動きを一層加速させるものと期待されています。そして開発から事業化までを一体的に支援する国内初の拠点となります。
- センター内を見学させていただき、医療機器開発という言葉のイメージと違いました。
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伊藤氏 医療機器なので一般の機器開発とは少し違うかもしれません。無音ルームや電波暗室、動物の飼育ルームがあったりします。医療機器開発とは当然、これからの新しい医療のためのものを作っていくのですが、『作る』と同時に『評価する』ことが必要です。
人の体内に入れる機器などは外装器具以上に安全性の評価が重要になってきます。前臨床試験として動物(実験用豚)で安全性・有効性の確認を行います。また、非生物学的安全性評価試験(電気的・物理的・化学的安全性試験)も併せて行います。開発と評価をセットで行える施設は東日本にはありませんでしたから、今後、本センターによって医療機器開発のスピードがアップすること間違いなしです。
- 設計とサブコンの役割をお聞かせください。
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伊藤氏 設計(久米設計)は何もない白紙から、建物のイメージを創っていきます。施主様の要望を聞き、建物(使い方)のことをイメージし、壁(空間)を作っていく。『医療機器開発には何が必要なのか』を完全に理解して、『どの部屋がどこにあるべきか、どうすれば使い勝手がいいか』を考え建物を設計していきます。
そして、どの部屋に給排水が必要で、熱源はどこにあった方がいいのか、配管はどこを通すのがいいのか、ここの上には配管を通さない、オペ室の上の空調配管はシームレスにする等を考えていきます。電気も空調も同様です。建物全体のことや部屋の一つ一つのことを考え、配管設計をしていきます。
白紙から建物の詳細なイメージを『目に見える形』に落とし込むのが設計の仕事です。橋本氏 サブコン(セコムエンジニアリング)の役割分担は、設計者がイメージしたもの(図面など)を具現化するのが主な仕事です。躯体強度も含め、構造計算や配管材等の種類や耐震支持工法検討の他、システム性能確保に係るすべてを満足させる事により完成へと導きます。
- 病院は一般の建物よりもグレードの高い配管が要求されると聞きましたが、ここでもやはり同じですか?
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伊藤氏 本センターは病院よりも更にハイグレードな配管が要求されます。病院でも当然、万全の配管設備が必要です。患者さんがいますので、漏水などあってはならないし、医療機器も精密で高額なので、そこに漏水しようものなら機器ごと使い物にならなくなってしまいかねませんから。
しかし、本センターの場合は、試験期間が1年以上かかるものもあり、漏水があれば、試験機械が停止する。そうなると機械だけでなく、1年間の実験データが駄目になってしまいかねません。
更なる対策として、万一何かあっても甚大な被害がでないように配管のルート計画を行い、実験機器の上には配管が通らないようにする。さらにその上で漏水対策をしています。橋本氏 無音ルームで金属の配管を使うと、それが天井裏でも配管に音が反射してしまう。そのため反射の少ない樹脂製配管が必要だったりします。各部屋の用途に応じて管種をかえ、特殊な用途にも対応する最適管材を選択します。
伊藤氏 配管はメンテナンスが必要です。『40年後の改修工事の際にも改修がしやすいように』ということも考えて配管設計を行います。
改修工事の際にも、出来るだけセンターの機能を止めることなく、改修できるようになっています。
- 積水化学の空調配管材、新製品のクウチョウハイパーCHをご採用頂いた経緯を教えてください。
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伊藤氏 新技術を率先して使いたいという土壌がありました。衛生(給水)は水道局の検査があるため、新製品採用のハードルが高い、というのは確かです。公共事業では一般的に『この会社にしかできない技術』を要する製品は避ける傾向にあります。一方、空調設備に関しては新しい技術が採用されやすいのは確かですが、それも採用の担当者によるのではないでしょうか?
橋本氏 採用の具体的な理由としては大きく2点あります。
まず一つ目は、『技術系の職人不足』ということです。そして二つ目は『耐久性と耐震性』です。
- 職人不足とは、オリンピック需要による人手不足ということですか?
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橋本氏 そうではありません。福島にいる技術系の職人さんの絶対数は限られています。復興需要による仕事が、それよりも多くあるので、職人さんを確保することが困難なのです。福島県にいる職人さんの流出ではなく、復興需要に対応できるだけの職人さんがもともと福島にはいない、ということでしょうね。
そして短工期を要望されていました。通常、空調配管はSGPを使います。100AのSGPの場合はネジ切り作業に時間がかかります。ネジ切り作業は職人技で個人の技量による精度も問題になりますし、本現場は天井も高い。安定した精度を出すには腕のいい職人さんが多く必要です。高所作業でのSGP配管のネジ込み作業や配管重量を考えると、軽量で安全で作業性も向上するクウチョウハイパーCHの方が作業員による作業のムラが出ず、安定した施工ができると考えました。
積水化学のクウチョウハイパーCHは接続も均一なEF接合で行えます。誰でも均一な施工が可能です。また軽量で施工スピードはSGPに比べ雲泥の差があります。技術のある職人が少なくなってきたので、リスクを最大限に回避しました。
- 耐久性と耐震性の面ではどうですか?
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橋本氏 別物件のメンテナンスで、SGPをバラした際に、管内面にスケールが付着し詰まっていることが多かった。
伊藤氏 積水化学の給水管エスロハイパーAWに関しては福島県でも多数の実績があり、スケールの付着もない点や耐震性の点でも十分信頼していました。同様な性能を確保しているのは間違いないため、空調用のクウチョウハイパーCHの採用を福島県様にアドバイスさせていただきました。
やはり非常に重要な施設なので、将来的にも最大限にリスクの少ない配管材を採用しました。設計は目的に合った配管材を選定していきます。施主様の頭にあることを図示していくだけではなく、さらに工期短縮や将来的なリスクまで軽減していくのも仕事です。
- ピット内や天井裏を見学させていただきましたが、実際に施工を完了して、セキスイ製品はいかがでしたか?
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橋本氏 今回のクウチョウハイパーCHの施工は天井での融着でした。作業は昇降作業車に乗って行いました。実際に作業をした結果、SGPと比べ作業はラクで時間的にも非常に大きな差がありました。
伊藤氏 原設計の管材はSGPにしていましたが、実際にクウチョウハイパーCHを使ってみて、その良さが証明できましたね。
- 最後に積水化学への要望などがありましたらお聞かせください。
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伊藤氏 空調の金属管をすべてクウチョウハイパーCHに置き換えるような発想もしてほしい。高層物件が今後も増えていきます。さらに高耐圧化(2MPa超)し、安価な管材があれば高層物件にも樹脂管が使え、樹脂管のメリットが活かせると思います。
橋本氏 狭い場所での配管に対応するために面間寸法が小さい『納まりのよい継手』を開発してほしいですね。やはり空調設備は狭いスペースでの作業が大半なので、効率よくスペースを使える製品の充実を今以上にお願いします。
貴重なご意見をありがとうございます。皆さまのご要望にお応えできるよう製品開発・サービス向上をしていきたいと思いますので、今後とも宜しくお願いいたします。
今回ご紹介させていただいた製品概要
空調配管用高性能ポリエチレン管 クウチョウハイパーCH
製品解説
空調配管用高性能ポリエチレン管クウチョウハイパーCHは、冷温水用途に最適のポリエチレン管です。耐久性・耐食性に優れるため腐食や漏水の心配がないうえ、軽量でスピーディな施工が可能です。
冷温水枝管のスーパーエスロメタックスFCや冷却水管のエスロハイパーAWなどと合わせ、オールプラスチックの一体化ライン構築を実現します。
特長
- ●経年劣化による内面の腐食と漏水の心配がありません。
- ●ポリエチレン管は錆びることがなく、水道本管などでも豊富な実績を持っています。
- ●軽量でスピーディーな施工が可能(100Aで重量はSGPの約1/3)。
- ●管と継手の接合は信頼のEF接合(ねじ切りや溶接の作業は不要)。
これ以降は会員の方のみご利用いただけます
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