さいたま新都心医療拠点整備事業「埼玉県小児医療センター」
印刷版PDF(会員限定)小児医療センターとさいたま赤十字病院が連携して、子どもから大人まで高度な医療を提供する安心・安全の拠点とするために、現在、さいたま新都心に小児医療センターを移転・整備中。その排水/中水/空調配管にセキスイ製品が採用されました。2015年11月10日に埼玉県 病院局 設備担当者の大澤さんにインタビューをさせていただきましたので紹介させていただきます。
インタビュー:2015年11月10日 埼玉県 病院局 小児医療センター建設課 大澤 春樹さん
工事のあらまし
敷地面積 約24,000m2のさいたま新都心8-1A街区に、「埼玉県立小児医療センター」と「さいたま赤十字病院」の2病院が移転。両病院は構造上は別々の建物ですが、連結されて1つの建物になり、周産期医療や救急医療で連携します。2016年7月末、完成予定。
今回は「埼玉県立小児医療センター」の排水管に耐火VPパイプ、中水管にエスロハイパーAW、空調配管にACドレンパイプとスーパーエスロメタックスが採用されました。
(※2015年11月10日現在)
病院には十二分な設備で安全・安心!
- ―まずは、埼玉県病院局のお仕事についてお聞かせください?
- 埼玉県病院局では、通常の病院では受けられない高度医療を行う県立病院を運営しています。担当する病院は、『循環器・呼吸器病センター』『がんセンター』『小児医療センター』『精神医療センター』の4つです。
運営は医療行為から医師や看護師さんの管理、医療機器や建物のメンテナンスまで全般を行っています。私自身は設備が専門であり、以前は県の設備課に在籍していたこともあります。そして、今回はさいたま新都心への小児医療センター移転・建設プロジェクトにおける設備関係の工事監理を担当しています。
- ―今回のプロジェクトの概要をお聞かせください。
-
現在(2015年11月)は岩槻に小児医療センターがあります。それは1983年に開設され、建物の耐震上、問題があります。そのため耐震補強するか? 建て直すか?という選択があったのですが、患者さんがいますから、現在の場所〈岩槻〉のままで対応するということが考えづらく、移転が決められました。(さいたま新都心の建物が完成してから、岩槻にある病院建物は別用途に利用予定。)
そして、さいたま新都心で、さいたま赤十字病院と併設できることにより、より高度な医療を提供できる拠点となると考えています。赤十字病院には産科がありますし、当然、妊婦さんや赤ちゃんの中には産後に高度な医療を必要とする可能性も出てきます。その際にも赤ちゃんはスムーズに高度医療が受けられる小児医療センターにスライドできるわけです。患者さんにとっても安心して治療を受けられ、メリットは非常に大きいです。
移転・建設後は小児医療センターと赤十字病院の2棟が併設されるのですが、両病院は繋がれて行き来できるようになります。また、共通して必要な施設であるレストランなどは、どちらか一方に作ればいいため、そういう点で無駄なコストやスペースが省けます。しかし、そのためには患者さんの呼出システムとか電話の内線、電子カルテなどは両病院で共通してシームレスな共通インフラとして整備します。
そういう点でいろんな設備に関して、赤十字病院と調整する必要が多々あります。私はその調整も行っています。
- ―災害時の対策として重視したものは?
- そうですね。小児医療センターの新病院設備のコンセプトとしては、東日本大震災の教訓から、
1.エネルギー源の多様化
2.省エネ、省CO2
3.災害時のインフラ確保
などの重点項目を掲げました。これらの実現のために、ガスでも発電できるようにするコージェネレーションシステムの導入や、このコージェネレーションシステムで作られた熱の内、余剰の熱を地域冷暖房に供給するエネルギーネットワークの構築や災害時に対応できる非常用発電設備などの導入を図っています。
また、さいたま新都心周辺はスポットネットワークといって、3回線から電力の供給を受けているので、東日本大震災のときにも停電しなかった実績もあります。病院としては非常用発電設備と併せて、万全の態勢で安心・安全を提供できます。
- ―積水化学の製品を採用していただきました経緯をお聞かせください?
- 実は当初は別の配管材を考えていたのです。しかし2020東京オリンピックの影響による資材高騰、人手不足が工事を行う上で問題となっていました。1日1,000人以上が建設作業に携わっています。ゼネコンとの相談を繰り返しましたが、当初の設計仕様のまま、鉄系の配管材で施工すると人件費も含め、相当なコストアップが必要という試算が出たのです。このような事態に対応するために、如何に省力化できるかをゼネコンや施工者の方々と協議を何回も繰り返し、今までの実績も考慮に入れた結果、セキスイ製品をゼネコンから提案されました。私もその性能は理解していましたので、総合的に考えてセキスイ製品の採用を承諾しました。
空調配管にACドレンとエスロメタックス
空調設備では、当初予定していた鉄系の配管ではなく、積水化学のACドレンパイプ(空調ドレン用結露防止層付塩化ビニル管)や保温付スーパーエスロメタックス(金属強化ポリエチレン管)を採用させていただきました。
とにかく人件費を抑えるために省力化を図りたかった。ACドレンパイプは保温不要、スーパーエスロメタックスは予め保温付なので、保温作業に関して非常な省力化が図れます。
スーパーエスロメタックスに関しては柔軟で施工が感覚的かつ臨機応変に対応可能です。漏水の心配となる接続箇所も減らせます。しかし病院という施設の関係上、材料の耐久性と施工品質は完璧でなくてはいけません。病院は建設後の配管改修などは非常に難しいのが現状です。また今後の改修を含めたトータルコストを如何に下げるかも非常に重要です。
ライニング鋼管などのネジ込み作業は職人の技量により施工品質にムラが出て、ネジ切りの箇所が錆びてしまう可能性が拭えません。
排水配管に耐火VPパイプ
排水配管でも先程の資材高騰を考慮し、耐火機能に関して省力化も図れる耐火VPパイプ(建物用耐火性硬質ポリ塩化ビニル管)を採用しました。耐火VPは既に県営住宅などにも採用していましたので、実績も十分あると考えています。いろいろな数値データや実績を考慮した結果、耐火VPの材質なら今回は保温も必要ないだろうということで、その点でも省力化が図れています。
以前に診察室などに用いた鉄系配管では数年で漏水してしまったという事例も伺っています。如何に長寿命の配管を採用するかと施工品質の確実性を考えて、樹脂系の配管を採用することにしました。
中水配管にエスロハイパーAW
今回の給水設備としては、市水を受け入れる上水と、下水処理場からの処理水の中水利用を考えています。この中水に関しては、当初はステンレス配管を考えていました。しかし中水は残量塩素濃度が高く、ステンレスでは支障があることが判明しました。そこでポリエチレン管のエスロハイパーAW(水道用耐震型高性能ポリエチレン管)を採用しました。耐震性も高く、施工も確実です。昔は配管作業といえば職人技でしたが今はそんな時代ではありません。誰がやってもEF接合のように確実な施工品質が確保できることが必要です。
水道配水用ポリエチレン管は、ウエスタ川越(2015年竣工)など県施工案件でも十分な実績があり、施工が確実なこともわかっていたので採用を承諾いたしました。
HIパイプも考えたのですが、接着接合だとやはり施工ミスの心配が拭えないので、候補からは消えました。それほど確実な安心つまり施工の信頼性を病院は求めています。
- ―実際に施工を始めて、セキスイ製品はいかがでしたか?
-
1日に1,000名以上が入っている現場なので、何度も言いますが省力化はやっぱり非常に役に立っていると思います。そういう現場では施工品質の均一化ができるというのが安心の最大のポイントです。昔は配管作業というと職人技という感じがありました。ライニング鋼管のネジ込み作業などがその最たるものです。接続部は本当にきっちりできていないと、そこからサビが発生してしまいます。
しかし、エスロハイパーAWのEF接合などは、誰がやっても機械(EFコントローラー)が常に均一の施工品質を確保してくれています。病院なので通常の設備以上に完全性を求め、神経を使います。漏水して高価な精密機器に水でもかかったら、それだけで1億円がパーになってしまうということにもなりかねません。病院はいろんな薬品を使うので、施工も材質にも気を付けないと駄目になります。空調衛生は感染症対策として極度のクリーン度が求められます。すべてに高い品質が要求されます。
- ―最後に積水化学への要望などがありましたらお聞かせください。
-
やはり、現場での作業員の数が多いので、施工品質を確実にあげられ、配管の信頼度がアップする製品を追求してもらいたいです。エスロハイパーAWのようなEF接合で完璧に接合できるものはいいですね。それと接着接合に関しても、より信頼度を上げて欲しいですね。接着剤の塗布などは職人の技量によるところが多いと思います。塗り忘れ、塗りムラなどが起きる可能性があります。カンタンに出来るようになったとはいえ、やはり簡単なだけに万が一間違えると抜けてしまうかもしれないという心配は払拭できません。HIパイプを使おうかという話もありましたが、危険がゼロではないので今回は、エスロハイパーAWを採用したという経緯もあります。
もう設備系の配管作業は職人技の時代ではなくなっており、また鉄系の重たい管を運ぶ時代でもありません。誰が施工しても永年信頼できる配管のための製品開発をお願いいたします。
―ありがとうございました。今後も皆さまのご要望にお応えできるよう製品開発・サービス向上をしていきたいと思います。こちらこそ今後ともよろしくお願いいたします。
今回ご紹介させていただいた製品
空調ドレン用結露防止層付塩化ビニル管 エスロンACドレンパイプ
製品解説
快適な室内空間を支える空調設備。ビル設備の高度化にともなって、各フロアに張り巡らされる空調配管にも、高い施工品質と作業性の向上が求められています。
ドレン配管用の結露防止層付塩ビ管「エスロンACドレンパイプ」は、管・継手とも発泡断熱層が一体化されており、保温材が不要で配管全体の結露を防止。保温工事に関する部材、工程などの手間がかかりません。
配管と同時に保温工事も完了。オフィスビル、ホテル、病院等の空調ドレン配管材料としてスピーディな施工が可能です。
特長
- ・保温工事の必要なし
- ・結露防止
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金属強化ポリエチレン管 エスロンスーパーエスロメタックス
製品解説
エスロンスーパーエスロメタックス管はプラスチックと金属管のメリットを併せ持った管材です。内層には高耐熱ポリエチレン樹脂、外層には高密度ポリエチレンを採用し腐食の心配がありません。また、アルミ補強層により施工時に管の曲げ加工をおこなった形状を保持する事が可能に!
耐熱・耐食・施工性に優れ長期にわたって安心してご使用いただけます。
特長
- ・高温・高圧領域で使用できる
- ・柔軟で耐震性にも優れる
- ・酸素透過はありません
- ・自在な曲げ配管
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建物配管用耐震型高性能ポリエチレン管 エスロハイパーAW
製品解説
エスロハイパーAWは、優れた特長を有する高性能ポリエチレン製の水道用管材です。
ポリエチレン管ですので腐食や赤水の心配がなく、長期間にわたって安全な水を供給できます。また素材の高密度ポリエチレンは柔軟性が高いうえ、管と継手をEF接合で完全に一体化できるため地震動にも強く、安心のライフラインの構築が可能。さらに軽量で施工性にも優れ、配管工事のトータルコスト削減にも貢献します。
特長
- ・高耐久で腐食・赤水無し
- ・高い柔軟性とEF接合で優れた耐震性
- ・軽量・易施工でコスト縮減に効果
- ・豊富な品揃えで一体管路を構築
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建物用耐火性硬質ポリ塩化ビニル管 耐火VPパイプ・継手
製品解説
耐火VPパイプは、三層構造の塩ビ管で、内外面の硬質ポリ塩化ビニル層と、高温になると大きく膨張し断熱・耐火層を形成する特殊配合の中間層からなる、業界初の耐火性プラスチック管です。パイプ同士をつなぐ耐火DV継手にも独自の燃焼遅延配合を採用しています。
建築物の防火区画の貫通部分に耐火VPパイプと耐火DV継手を組み合わせて使用することにより、耐火被覆処理などを施さなくてもプラスチック管のみで火災時の延焼を防ぐ画期的な塩ビ管材です。
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空調配管用高性能ポリエチレン管 クウチョウハイパーCH
製品解説
空調配管用高性能ポリエチレン管クウチョウハイパーCHは、冷温水用途に最適のポリエチレン管です。耐久性・耐食性に優れるため腐食や漏水の心配がないうえ、軽量でスピーディな施工が可能です。
冷温水枝管のスーパーエスロメタックスFCや冷却水管のエスロハイパーAWなどと合わせ、オールプラスチックの一体化ライン構築を実現します。
特長
- ・経年劣化による内面の腐食と漏水の心配がありません
- ・ポリエチレン管は錆びることがなく、水道本管などでも豊富な実績を持っています
- ・軽量でスピーディーな施工が可能(100Aで重量はSGPの約1/3)
- ・管と継手の接合は信頼のEF接合(ねじ切りや溶接の作業は不要
製品の詳細はこちら
今回の物件の営業担当 |
積水化学工業株式会社 環境・ライフラインカンパニー 東日本支店 関東設備システム営業所
〒330-0854 埼玉県さいたま市大宮区桜木町 4-333-13(OLSビル) Tel:048-646-0160
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