県住入間霞川団地の排水設備に耐火VPパイプ、
耐火プラAD継手などが採用!
印刷版PDF(会員限定)人口減少や少子高齢化が進行する中で、県営住宅団地の再編整備が進んでいます。埼玉県では県内各所にある小規模団地などを集約し、中核団地として再整備する建替え事業に着手しています。今回取材した入間霞川団地もその一つ。団地は17棟で順次建替えを進行中。その排水管で耐火VPパイプが採用されました。
インタビュー:埼玉県都市整備部 設備課 田島 和彦さん
工事のあらまし
入間霞川団地は建物が老朽化し、その対応が必要であること、また埼玉県の進める中核団地としての再整備事業で建物の建替えを棟毎に順番で行っています。
工事建物:鉄筋コンクリート8階101戸
発 注 者:埼玉県
工 期:平成27年12月~平成29年3月
設 備:第1工区 SC大宮管工(株)
第2工区 SC(株)ケーアイ
第3工区 SC埼玉設備工業(株)
本団地建替えにあたって、排水設備で耐火VPパイプが採用されました。耐火VPパイプの採用経緯などを監督員である埼玉県都市整備部 設備課 田島主幹にお話を伺いました。
- 埼玉県の県営住宅団地の現状を教えてください。
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県営住宅は住まいのセーフティネットとして非常に重要な役割を担っていますし、県の住宅政策の重要な柱と考えています。しかし今後は世帯数が減少し、同時に入居者の高齢化などが進行する中で今までの県営住宅のあり方が問われています。市街地から離れ交通の便が悪かったり、少子高齢化が進行し、コミュニティもつくりづらくなっている団地も少なくありません。
- 建物や入居者の状況について具体的に教えていただけないでしょうか?
- 埼玉県内には約2万7千戸の県営住宅があり、団地数で言うと312団地あります。その約3割弱が昭和40年代に建てたもので、基本的にその前後に造られた建物が非常に多いです。それらは建築後40年以上経っており当然、老朽化も進んだ上に、エレベーターもない建物で高齢者にとっては非常に生活しづらい状況です。
団地は県内各所にあり、1500戸を超える大型団地がある一方、数戸しかない非常に小規模な団地もあります。
また駅から近く利便性も高く入居者の応募倍率が高い団地がある一方、市街化調整区域や都市計画区域外など倍率の低い団地もあり、需要と立地がマッチしていない状況も発生しています。
入居者の状況としては、単身の高齢者世帯は約24%、高齢者のみの世帯は約39%となっており、著しく高齢化が進み、今後もこの傾向は続くと考えられます。そうした状況に対し、エレベーターが利用できない住宅が約6割、バリアフリー化されていない住宅が約7割あります。そのため県としては、『県営住宅の地理的な集約』と『入居者に合った建物』を実現しなくてはいけません。
- 団地再編について詳しくお聞かせください。
- 埼玉県では平成26年度に『県営住宅のありかた』を策定し、コンパクトシティ、効率的団地経営という観点から、団地の集約化と廃止により再編整備を行っています。つまり既存団地を立地、需要、規模、そして市町村営住宅の立地などの状況も勘案しながら、県営住宅団地の将来的な集約先候補となる中核団地と、建物の耐用年数まで改修しながら活用する維持・保全団地に分類します。要はメリハリをつけるということです。まさにこの入間霞川住宅は中核団地になります。
- 今回の入間霞川住宅の建替えにおいて設備など、重要視したことは何ですか?
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建材などは良いものを使っています。贅沢品という訳ではなく、実際に自分で確かめて、これは長年使うには良いものだ、と思ったものを使用しています。入居者のこれから先の生活に係ることなので、良いものを採用しないといけない。基本的には国土交通省の仕様がありますが、新技術を導入することで、さらに建物にとって良いと思ったものは導入していきます。
- 今回の入間霞川住宅の建替えにおいて気を使ったことは何ですか?
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基本的に居住者がいる中での建替え工事を行っていますので、今いる居住者の方の迷惑にならないように最善を尽くしています。
建替え工事の手順としては、まず初めに新しく1棟を建てます。そして、次に既存の1棟の居住者の方々に新しく建てた棟に移り住んでもらいます。そうすると1棟がまるまる空くので、その棟を壊してまた新しく建替えます。そしてまた別の棟の居住者の方々に新築の棟に引っ越してもらい、また空いた棟を壊して建てる。それを繰り返していきます。順繰りに建替えていくわけです。
だから居住者の皆様の協力がなければ成り立ちません。そして順番に建替えていくのでやっぱりスピード感も必要です。
- 排水設備で耐火VPパイプSを使われた経緯を教えてください。
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耐火VPパイプに関してはセキスイさんの千葉工場で燃焼実験を見せてもらって、火災が発生した時にコンクリート部を閉塞できることにビックリしました。実際に見て製品の良さは確認したわけです。そして製造工程も見せていただき、これなら大丈夫だ、と確信が持てたので採用しています。他の物件でも使っていて非常に良い製品だと感じています。
排水たて管には従来は耐火二層管を使いますが、問題もありました。切断の際に粉塵と騒音が発生しますので、居住者の方に迷惑をかけてしまいます。建替えを順次行っていくので、住民の方は配管の際にはいつも騒音と粉塵に悩まされてしまいますから。
また建物にとっても耐火二層管より耐火VPパイプは良いところが多い。まず軽量なので建物にやさしい。建物はずっと配管を支え続けるので、軽量であることは建物を少しでも長持ちさせるのに有利です。
また、コンクリートに空けるスリーブ径を小さくできるし、鉄筋を切断する量を抑えられます。このことも建物の耐震性能を保持するには非常に重要です。おまけに耐火VPパイプだけで防火区画を遮断できます。
今回は遮音カバーを巻いてある耐火VPパイプSを使用しています。実際に生活をした際にも、排水の流れるときの振動や音も抑えますので、安心して入居者の方々に暮らしてもらえます。
- 施工を現場で見ていて、いかがですか?
- 耐火二層管の場合は二人でないと運べなかったものでも、耐火VPパイプなら一人で運べます。階段や作業用エレベーターでの運搬になるので、軽くて運びやすいのは非常に重要です。集合管(耐火パイプAD継手)の重量も圧倒的に軽いので、運搬も施工も非常にラクになっているようです。作業員も高齢化しているので製品の軽量化は重要です。工期や作業精度にも影響してきますから。
- どのように設備関係の情報を入手していますか?
- 展示会で情報収集します。管工機材展や県産品フェアで自分の担当している案件で必要になりそうな情報を集めます。担当者である我々の習熟度が低いと結局は居住者の方々に迷惑が掛かります。『次回にもっといいものを作ればいいや』なんて言っていたらいけない。居住者にとっては今回がすべてになりますから。当然、我々も習熟度を常に上げていかないといけません。
- 積水化学への要望などがありましたらお聞かせください。
- 最下階の脚部継手が金属管なんですよね。それを樹脂管にできれば本当の意味でオールプラスチックにできるので是非とも開発してください。やっぱり脚部継手は点検・洗浄などするときに器具があたるので難しいのでしょうか。強度をアップした樹脂管で対応できたらもっと便利になると思います。
貴重なご意見をありがとうございます。
次に各工区の設備を担当された3人にお話を伺いました。耐火VPパイプを使って、どうでしたか?
第1工区 SC大宮管工(株) 高橋さん
第2工区 SC(株)ケーアイ 坂本さん
第3工区 SC埼玉設備工業(株) 古井さん
以前にも耐火VPパイプを使っています。作業をする側にとっては非常にありがたい管材です。まず施工性がいい。従来の耐火二層管の場合は切断の際に内管と外管を切らなければいけないので、2回切らなくてはいけない。耐火VPパイプは1回の切断でいいので施工のスピードアップが図れますし、その際にも近隣への騒音や粉塵も気にしなくていいので施工がスムーズに進みます。
そして軽量なのがいいですね。建物自体の躯体に与える影響も少ないですから。耐火二層管では躯体に与える影響も大きい。やっぱり永く使っていくに当たっては非常に重要になってきます。私たちの作業を考える上でも工事用エレベーターで上階に運んでいくので重い管だと心配ですね。作業員の高齢化とか関係なく、軽い方がどんな作業でもはかどります。労務費は数字では出しづらいのですがね。
- 耐火VPパイプの有利な点は?
- 狭い空間で勾配の確保をしなければならないので、ユニットバスの下の配管では圧倒的に有利です。耐火二層管だと外管がある分、勾配がとりづらくなってしまう。そういう心配が耐火VPパイプにはありません。
- 積水化学への要望などがありましたらお聞かせください。
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満水試験時の満水継手を樹脂で作ってもらいたいですね。鋳鉄管だと結局、縁が切れてしまうため、オール樹脂でできた方が良いと思います。
皆さまのご要望にお応えできるよう製品開発・サービス向上をしていきたいと思いますので、今後とも宜しくお願いいたします。
今回ご紹介させていただいた製品
建物用耐火性硬質ポリ塩化ビニル管・継手 エスロン耐火VPパイプ
製品解説
積水化学の開発した耐火テクノロジーにより塩ビ管がさらに進化! 熱によりパイプの中間層が膨張し、貫通部からの熱気の浸入を遮断。火災の際の延焼を防止します。排水管・通気管の施工において従来、手間のかかっていた区画貫通処理も不要。スピーディな施工と確かな安心を実現する耐火VPパイプは適用範囲を広げ、さらに使いやすくなりました。プラスチックのパイオニア、エスロンパイプはこれからも進化し続けます。
特長
1.耐火DV継手は耐火VPパイプとの組み合わせで確実に延焼を防止。
2.従来の塩ビ管と同等の取り扱いが可能。
3.防火区画の貫通がパイプだけで可能。
耐火VPパイプS+耐火プラAD継手
【軽量】
耐火プラAD継手、耐火VPパイプSは従来品より軽量!運搬もラクラク!
【耐食性】
排水で実績のある硬質ポリ塩化ビニル樹脂で、錆は発生しません。
【易施工性】
1.防火区画をそのまま貫通可能!
2.上部、横枝接続はゴム輪ワンタッチ。熱伸縮の吸収も行います。
3.遮音システムも選択可能。
4.横枝管には、硬質ポリ塩化ビニル管と同寸法の耐火VPパイプ、立て管には被覆カバー付耐火VPパイプSを接続。
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