Introduction
流山市は昭和42年に市制がはじまり、今年55周年を迎えた水と緑の豊かな自然が息づく住宅文化都市。
平成17年8月に都心直結となるつくばエクスプレス(TX)が開通したことにより、沿線の市街地は「宅鉄法※」に基づいた鉄道の建設と沿線の一体的なまちづくりである「一体型土地区画整理事業」が進められてきました。
今回は、ポリエチレン管の創成期より現在に到るまで、長年にわたりエスロハイパーをご採用いただいている経緯や当時採用に至った理由などを伺いました。
インタビュー : 2022年8月10日
※【宅鉄法】…正式名称は「大都市地域における宅地開発及び鉄道整備の一体的推進に関する特設措置法」
Guest
流山市 上下水道局
上下水道事業管理者 志村様
水道工務課 浅川様・杉崎様・新行内様
Interview
- ———まず、志村さまにお伺いします。ご担当されている業務内容について教えてください。
- 志村様: 私は事業管理者ですので、一言でいうと上下水道事業の経営を担当しています。予算策定及び決算の最終責任者という位置付けです。平成25年から水道事業管理者をしておりましたが、市長より上下水道局立ち上げの要望を受け、平成27年からは、上下水道事業管理者を務めています。今年度は下水道事業の安定経営に向け「下水道ビジョン」を策定している所です。
- ———エスロハイパーをご採用時も水道を担当されていたのでしょうか。
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志村様:18年前のエスロハイパー初採用の時は給水課長をしていました。当時、積水化学の営業担当の山田さんに、エスロハイパーを熱く紹介してもらいました。軽くて耐震性もあり、更に経済的だ!と。「なんて良いものがあるんだ!」と感動し、この製品は使うべきだと強く感じたのを覚えています。
- ———当時、良いものだから使おう。とすぐご決断されたのでしょうか。
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志村様:TX沿線の区画整理事業をスタートしたばかりでしたので検討するのに非常にタイミングが良かったと思います。私はずっと土木部で道路や下水道を担当していたので、新しいもの好きというのもあったかもしれません。当時、TX沿線600haの区画整理事業を開始して、事業費の縮減が重要な課題としてあり、エスロハイパーはうってつけでした。もちろん良い製品であることは採用の大前提であります。ただし当時の事業管理者(今の自分と同じ立場の方)も、最初は採用に賛同いただけませんでした。そこで、エスロハイパーが素晴らしい製品であることを納得いただくまで説明しました。ポリエチレン管の採用事例がまだ少ない時代でしたが、今振り返ってもこの時の決断は良かったと思っています。
- ———次に、浅川様のご担当業務について教えてください。
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浅川様:水道工務課全体のマネジメント業務をしております。 具体的には工事全体の施工進捗状況の管理やそれに伴う職員の人的配置、調整等が主な内容です。
- ———今までエスロハイパーを使われて感じた良いところ、悪いところがあればお聞かせください
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志村様:施工性がいいですね。最初にしっかりとした講習会をやってくれたことで、施工業者さんの不安も解消し安心して施工してもらえたと思います。例えば、水場での施工では、融着に電気を使うということもあり、採用を決めた当時、施工性が悪化するのではないか、感電してしまわないか、など不安に感じていたそうです。
積水化学さんの講習会では水場での施工方法もしっかり実演指導いただき、業者さんはとても心強く感じたそうです。浅川様:業者さんからもエスロハイパーの評判は良いですよ。非常に使いやすいとお声をいただいています。まず管自体が軽いため施工が楽という声を聞きます。昔のように人力で職人技のようなものは必要なく、ポリエチレン管の電気融着施工は誰がやってもミスが出ず、非常に使いやすいと聞いています。
水場施工もありますが、水替えしながらやったり、軽いので陸で組み融着してから降ろしたり出来るので難しくない。やりようがいくらでもあるという所もポイントです。
未採用の事業体の方は施工に不安を感じるかもしれませんが、雨天でも水場でも、全く心配はないですね。
- ———では次に、新行内様のご担当業務についてお聞かせください。
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新行内様:4月から課長補佐兼工務係長をさせていただいております。
工務ですので、正に配管を整備していく係です。ビジョンに則って配管の拡張や改良・区画整理などを合せて整備しています。管工事は年間2%の進捗を目標にしています。実は以前にも水道工務課にいまして、7年ぶりに戻ってきました。
- ———以前、水道工務課にいらしたときにはすでにエスロハイパーは使われていたんですね
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新行内様:はい。当時から使っていました。たぶん最盛期だったんじゃないでしょうか。その時は区画整理も4地区進めていましたので、今考えると結構な本数の整備をしていたなぁ、と思います。エスロハイパーは現場の施工性の良さもありますが、設計のし易さという部分で大変助かっています。鋳鉄管の配管図を書くのは結構大変なんですよ。設計がし易いと発注も楽です。発注がし易いと展開が早くなり、早い展開により忙しい区画整理にも迅速に設計対応することが出来たと思います。先ほど話をうかがいました「概算数量設計による発注※」はエスロハイパーの設計向きだと思うので興味深いです。
浅川様:エスロハイパーは区画整理で対応しやすいと私も思います。設計とは別の視点になりますが、区画整理をやっていると、なかなか計画通りに進まないことが多々あります。急に「こっちも配管して欲しい」といった要望が点々とあがることがあります。
エスロハイパーは市中在庫から急ぎの場合にも簡単に調達できましたし、いつでもスピーディな施工が可能なので、区画整理の対応がしやすいという声が多くあがっています。
- ———設計のし易さについてもう少し詳しくお聞かせください
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新行内様:やっぱり配管図を書くのが楽です。悪く言うわけではないですが、先程も触れました鋳鉄管での配管図になると、管種や継手の種類が多く、材料を覚えるだけでも結構大変だったりします。
対して、エスロハイパー(ポリエチレン管)は配管図がシンプルなので、戻ってきた時もすぐに思い出し馴染めました。
- ———―ありがとうございます。では、杉崎様の業務について教えてください
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杉崎様:私も水道工務課の課長補佐をさせていただいております。 今は施設を担当しています。浄水場の維持管理などですね。先程配管図のお話がありましたが、私もエスロハイパーの設計のし易さに助けられた覚えがあります。スラストの計算が不要だったり等、設計が楽になったという点で大変お世話になりました。
コラム ※「概算数量設計による発注」って?
近年「概算数量設計による発注」が注目されています。
水道では「管路更新を促進する工事イノベーション研究会」にて「小規模簡易DB」の名前で検討されているものです。
今まで事業体様が「発注時」に作成していた詳細設計図面等を省略し、概算数量設計にて積算・発注します。そして契約後、受注者様が設計図面等を作成し、発注者の承諾により工事を施工する方式です。契約から現場着手まで受注者の裁量度が増し、現場条件に合わせた設計図面を作成する事で、施工の自由度を高める事が期待されています。
ポリエチレン管の場合、流山市様のインタビューで述べられておりますとおり「管路の設計が容易」という特徴があります。そのため、「概算数量設計による発注」の形態においても発注者様・受注者様ともに非常に楽に設計ができますので、制度の導入がより容易になると考えられます。
- ———皆様ご紹介いただきありがとうございました。話は少しもどりますが当時(18年前)エスロハイパーが採用に至った決め手は何だったのでしょうか。
- 志村様:やはり鋳鉄管は「重い」という所がずっと気になっていました。私は長く下水道での業務をしていましたが、下水道でよく使われる硬質塩化ビニル管、軽いじゃないですか。ゴム輪接続も接着も人力でできる。公共・雨水マスも脱コンクリートでの軽量化が進んでいました。良い意味で楽に仕事をしたいし、して欲しいと考えていました。異動後、どうして水道はこんな重い管ばかり使っているのだろう? と、不思議に思っていたんです。エスロハイパーなら軽いだけでなく性能面でも鋳鉄の耐震管と同等以上、しかも経済的です。
- ———なるほど。下水分野から水道分野に来られたからこそ感じた切り口ですね。
- 志村様:鋳鉄の耐震管というのは、接合部の強度がしっかりしていて抜けない物という理論でした。積水化学さんからエスロハイパーを紹介いただき、パイプと継手が溶けて一体化し抜けない様を、実際に見て・触って、これは理想的な管材だと思いました。特に当時は大地震が頻繁に起きていた時期でもありました。配水支管の継手だけでなくサドル分岐も含めて電気融着接合で一体化できるというのは特に魅力的でしたね。
- ———エスロハイパーには色々な特長がありますが、採用時に一番重要視したのは何だったのでしょうか。
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志村様:私の考えですが、施工業者さんに “新しいもの” を “実際に使ってもらう” ことがとても大事だと考えています。
それは新しい技術について知って触れてもらうという事でもあります。施工時に実際に施工をする作業者当人が戸惑ってしまうようでは、どんなに安くて丈夫な製品でも、良い設計や技術が使われていても、良くないと思うんです。ですので、積水化学さんの方で講習会・勉強会をしっかり実施いただきました。技術の継承という観点からも「新技術のしっかりとした習得」を大切にしていくのが重要だと思っています。杉崎様:私も当時、講習を受けました。よく覚えていますよ。講習会と勉強会に参加させていただき修了証のカードをいただきました。職員・業者ともに性能と施工に安心感を持ちました。
- ———ありがとうございます。実際にエスロハイパーを使用してきて気になる点などありますか
- 浅川様:あまりないですね。「他管工事で引っ掛けてしまう」という事例をたまに耳にすることがあります。そんな時には補修工事が必要にはなりますが、在庫しているメカ継手を使う事で短時間に補修することが出来ます。過去、特に困ったという事はありません。
- ———エスロハイパーにはスクイズオフ工法という補修工法があります。お隣の埼玉県三郷市ではよく使われている工法ですが、流山市ではお使いですか
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浅川様:本管での圧着工法のことですよね。本管でやったという話は、流山市ではあまり聞いてないですね。
杉崎様:本管の方ではないですが、給水側ではよく使っていますよ。主に二層管の補修ですね。
新行内様:ポリエチレン管の場合、通常はメカ継手での補修を行っていますが、なるほど、今資料を見せていただいて、まさしくポリエチレン管ならではのやり方ですね。つぶした所はEFソケットで補強するんですね。圧着時に完全止水ができた場合にEF接続で補修できるなら、現場で補修した部位についてもポリエチレン管の長寿命性を確保できるので良いですね。
- ———エスロハイパーをご採用いただき今年で、18年目とお聞きしています。目に見えるような成果はありましたか?
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志村様:経営の目線から言えば、事業費の縮減には大きく貢献してもらったと感じています。 令和3年に発行した『流山市水道事業基本計画(流山市水道ビジョン)2021-2030』に掲載の資料、「TX沿線まちづくり事業に併せた流山市水道の再構築」の中で、職員に調査してもらった結果を掲載しています。「再構築の評価」欄にはこうあります。
“事業費の縮減には、きめ細かに対応した。特にφ150以下の管路布設には水道配水用ポリエチレン管を平成17年より全面的に採用し、従前の鋳鉄管布設に比べ約15億円(区画整理地:約7.6億円)の縮減をした。なお、管路更新の結果漏水が減少し、有効率が大幅に向上した。平成14年度末92.68%から平成29年度末97.5%となった”
現在では約20億円もの縮減効果になっています。コスト縮減の要因はほかにもありますが、エスロハイパーの採用が最も大きく貢献したと言えます。おおたかの森浄水場を新設し、流山浄水場を廃止、区画整理に対応する管路整備など、流山市水道事業の整備をここまで工夫してやって来たんだ。と自負しています。採用が早かったからこその大きな縮減額の成果ですので、近隣事業体にも宣伝していますよ。『流山市水道事業基本計画(流山市水道ビジョン)2021-2030』
- ———それでは最後に積水化学へのご要望などありますか
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新行内様:エスロハイパーの呼び径200mmについても、早く日本水道協会規格をとって欲しいですね。今後の計画にある耐震化事業や老朽管の更新の際にその有効性が確認できればぜひ使いたいと思っています。規格化をすれば本格採用もしやすくなりますので。他管種との材料費の価格差も大きくなってきている中、今後コスト面でさらにメリットが出ると思います。是非、検討をお願いします。
水道配水用ポリエチレン管
(JWWA K 144/JWWA K145)
———ありがとうございました。今後もコスト縮減のみならず更なる易施工化を目指して製品開発を進めてまいります。本日はお時間をいただきありがとうございました。
ペットボトル詰め水道水「流山水」
流山市では、高度浄水処理によって、よりおいしくなった水道水を多くの方に知っていただくため、500mlのペットボトル水「流山水」を平成29年度より作製し、流山市のイベント等において、無料配布しています。
Products
今回ご紹介させていただいた製品
水道用耐震型高性能ポリエチレン管 エスロハイパーJW
製品解説———
1995年、日本で最初にポリエチレンによる配水ラインを開発・製造、販売して以来、その優れた特性により、ライフラインの耐震化・コスト縮減など、多くの信頼と実績を築いてきたエスロハイパー。その性能が評価されて、水道ビジョン、水道事業ガイドラインにおいても、耐震管材に位置づけられ、ますます注目を集めています。JWWA規格品・準拠品であるエスロハイパーJWは積水化学の高い設計・製造技術、そしてEF(電気融着)接合によって、施工を大幅に効率化。継手の品揃えを追加し、様々な施工状況にも対応。また、給水ラインとの接続もスムーズに行えます。安全性が高く、高性能な製品の供給をお約束するエスロハイパーJW。人々の、そして、水道事業の発展に大きく貢献していきます。
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1.耐震性
EF接合により一体化管路を構築。継手の抜けがありません。柔軟性に優れ、地震や地盤沈下の場合も破損・漏水しません。
厚労省耐震化に関する検討報告書 「耐震管として区分されています」 -
2.耐食性・衛生性
サビ・腐食が発生せず、長期にわたり安心して使用できます。
また、衛生的で地球にやさしい材料です。 -
3.施工性・省力化
軽量のため持ち運びが容易です。
また、柔軟性があり、生曲げ配管により継手の数を減らせます。 -
4.耐久性・経済性
配水用ポリエチレンパイプシステム協会では、山形大学の栗山教授にご参加いただき、多岐に亘る実験、検討を行った結果、配水用ポリエチレン管路の100年寿命を検証しました。
ダクタイル鋳鉄管に比べ、コストダウンが図れます。
これ以降は会員の方のみご利用いただけます
会員登録済みの方
未登録の方
<営業担当から一言>
(左)東日本支店 建築営業部
担当部長(水道チーム統括)大塚哲史
(右)東日本支店 東関東営業所
水道担当係長 照田智宏
大塚:流山市様にご採用をいただいた当時の「青ポリ管(エスロハイパー)」は知名度が低く、なかなか良さをご理解いただけない時代でした。従前の常識にとらわれず、信念をもって上司を説得頂いた志村様のような方がいらっしゃったからこそ今日の実績も出来、「配水管トップシェア製品」にまで成長を致しました。我々メーカーも今後更なる製品改良や施工性の向上を図り、既にご採用いただいているお客様にも喜んでいただけるよう、頑張ります。
照田:流山市様では今から18年前に千葉県の中でも相当早い段階からエスロハイパーをご採用いただいております。今でこそ全国の事業体様で実績を伸ばしていますが、当時はまだまだ手探りの状況の中、採用のご決断に至るまでにはご苦労もあったと思います。 その様な中、早くから水道配水用ポリエチレン管の良さに着目していただき、ご採用いただきました事、本当に感謝しております。 これからもメーカーとしてご期待に沿えますよう取り組んで参ります。