多摩防水技研株式会社様でゼットロンが多彩に活躍!前編
印刷版PDF(会員限定)Introduction
東京都八王子市に本社を構える多摩防水技研株式会社。
1985年にシーリング防水工事業として法人設立し、スーパーゼネコン等の一次下請けとして超高層ビルの外壁・屋上防水や、一般住宅・ビル・マンションの新築・改修工事などを手掛けてきました。その過程でポリウレア樹脂に出会い、独自に実証実験・研究を重ね、今では30社以上の会社と連携。ポリプロピレン硬質発泡体ゼットロンとポリウレア樹脂を組み合わせた製品を多数開発中。今回は天然木材に代わる合成木材『たまぼう』や建物への浸水対策『たまぼうすいばん』などの製品を見せていただきました。ゼットロンが母材として使われるようになるまでの経緯や今後の展望を草場社長、石村開発顧問、藤本様、木村様に伺いました。
Guest
多摩防水技研株式会社
社長 草場 清則 様
新規事業部 部長 藤本 幸一 様
新規事業部 木村 大原 様
Nicoldsystem株式会社
石村 憲之 社長(多摩防水技研 開発顧問)
Interview
ゼットロンとポリウレアは相性抜群!
- ———最初に多摩防水技研様について教えてください
- 草場社長 : 我々は防水業者なので屋上・屋根や外壁などのコンクリートに吹きつける防水をメインで行っております。そんな中で20年以上前にポリウレア樹脂と出会い、これを利用できないかと模索しながら開発に取り組んできました。
- ———ポリウレア樹脂についてご説明いただけないでしょうか
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草場社長 : 我が社の技術の一部はポリウレア樹脂という素材を使います。日本ではあまり知られていませんが、海外ではすでに普及が進んでおり、ウレタンと違ってほとんど加水分解することのない強靭な素材です。
ダイナマイトでの爆破実験を行うと、コンクリートブロックだけの爆破の場合は当然粉々になるのですが、これにポリウレア樹脂を噴き付けて爆破すると凹みはしますが形状は元のままという驚きの強靭さを発揮します。戦車が上を走れるくらい強靭な樹脂と言われています。
もうひとつの特性としては靭性、粘りですね。例えばポリウレア樹脂を吹き付けた燃料タンクを銃で撃つような実験では、貫通はしますがすぐにタンク壁が塞がることで水は漏れないようになります。これにより燃料タンクが大爆発するような事故も防げます。
これがポリウレア樹脂の2大特性です。そういう素材を我々は建築用途に応用し、100年防水を実現することを謳っています。これは、20年くらい前にゼネコンさんが建物の長寿命化に取り組みだして、我が社に対しても『100年保つ防水』が出来ないかという命題が出されました。100年保つということはコンクリートの中性化防止や剥落防止、耐震補強もターゲットに入れなければいけません。
長寿命で強靭な防水工法、しかも今後は作業員の人手不足がはっきり予測されていたので短時間で行える工法でないといけない。人手不足は当時から深刻な問題でした。そこで考えたのが、ポリウレアと我が社が持っていた防水技術を使って、施工のほとんどの工程を工場内作業に置き換え、システム化することによって、高機能かつ短時間施工を実現させる材料が作れるのではないか、ということ。
新材料を模索する中で、断熱材など様々な素材との併用によっていろんなことができることが分かり、セキスイさんのゼットロンに出会ったという訳です。
- ———ポリウレア樹脂の歴史を教えてください
- 木村様 : 海外では軍事技術に使われるような素材です。
1960年代、軍事産業用にアメリカで開発され、海軍で使用され始めましたが、1980年代にオープンにされ、日本にはようやく2000年代の頭に入ってきました。アメリカからスタートしましたが、ドイツ・中国・韓国などすでに様々な国で普及しています。
- ———ポリウレア樹脂とゼットロンを組み合わせようと考えたきっかけを教えてください
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藤本様 : もともと我々は防水シートを作っていました。ポリウレア樹脂をシート化してコーティングすることもやっていましたが、実はポリウレアの防水シートは、防水性・強靭性は抜群なのですが、ポリウレア樹脂はいわゆるゴムなので、貼り付けた後で躯体からの空気や湿気などにより若干ですが表面の膨れが出てしまいます。
日射しや熱によって防水層の下が膨らみやすく、下地の不陸をひろってしまったとか、きれいに仕上げたつもりでも光が当たるとデコボコして見えるなどの課題がありました。性能だけでなく見た目も完璧を追求しなくては、という思いがありました。
それで次に考えたのがパネル化です。水に強いパネルはないかな、最適な母材はないかなと探していたときに展示会でゼットロンのチラシを偶然目にしました。これがゼットロンとの出会いです。
- ———ゼットロンとポリウレア樹脂はどのように使われているのでしょうか
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藤本様 : 防水の新たな工法として『誰でも簡単に貼れるパネル』というものを考えました。ゼットロンの水に強い特性は勿論ですが、表面に不織布があることでポリウレア樹脂がしっかりとまとわりつく。つまり接着性です。
また不陸やクラックを抑えるためにゼットロンが機能しています。ペタッと貼るだけで綺麗に施工でき、省力化対策の工法として確立することができました。
今までのスプレー防水ならもっと手早いのでは、と思われるかもしれませんが、前作業や後処理が非常に大変になります。スプレーだと飛散するためその空間まるごと養生しなくてはいけないし、人通りがあるところではビニールハウスを作るようなイメージでの養生が必要となります。
また塗膜防水や手塗りだと、廊下で手塗りなんかやってしまうと乾くまで居住者様がドアから出られなくなります。パネル化した工法なら、貼ったすぐ後に踏んでも構いません。貼り作業後にすぐに廊下も使えます。居住者様がいながらでも工事ができて、ご迷惑が最小限にできます。さらに騒音もありません。
- ———防水以外の用途でもゼットロンとポリウレア樹脂は使われているのでしょうか
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藤本様 : 勿論です。防水用途だけではなく、さらに凄いのが『塗床(ぬりゆか)』工事に代わる下地コンクリートを保護し美装性を上げる役割を果たす床材として、ゼットロンでパネル化した「リムクロン」という商材があります。
いくつかスーパーに営業に行き、実際に厨房の床をやらせてもらいました。
通常なら塗床の工程だけで5日くらいかかります。
スーパーは10日間ほど営業を中止してくれるのですが、室内の什器や設備を全部移動させる必要もありますのでその内の大体2日間くらいしか塗床の作業日程が取れなくなってしまいます。通常5日かかる塗床じゃ当然間に合いません。さぁ、どうするということになり、「当社にはリムクロンがありますよ」と言ってやらせてもらっています。
一晩5、6時間の夜間作業で、厨房であれば15~20m2くらいは終わらせることができます。そのため1フロア1区画全部終わって、次の日はこっち、また次の日はこっちという感じで終わらせます。
実際に2年前に採用していただいたスーパーの方からは「施工から期間が経っているけど全く問題ないよ」と大変好評です。
ニッチな場所だけど、非常にタフな使われ方をしている場所、しかも早く直したいというニーズにちょうどマッチしています。
ポリウレア樹脂なのでタフな使われ方をされても大丈夫。過酷な場所でも耐えうる防水材なので厨房、フードコートの床、屋上などのご注文が多数来ています。
普段手塗ウレタンでやる所をパネルで貼れ、スラブ防水もでき、場所を選びません。さらにゼットロンは現場での加工性も良い。カッターやはさみでスッと切れます。職人たちも現場でかなり重宝しています。
- ———ゼットロンを採用してよかった点や今後の展開はありますか
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藤本様 : ゼットロンの特長としては車が上を走っても大丈夫な面強度とまったく水を通さない耐水性。さらに温度変化があっても伸び縮みしない。我々は実験として水中に3年間漬けていますがいまだに全く変化が見られません。ゼットロンはポリウレアと相性抜群、このふたつの組み合わせによってイノベーションが起きました。
今まではパネルを床に使う話をしましたが、今後はモルタル塗装の外壁に使うことを考えています。クラックだらけの外壁で今までシーリングで直している物件があるのですが、壁全面をパネルでやり替えます。ゼットロン3mm+ポリウレア防水1mmのパネルを壁全面に貼ってしまいます。壁全面の防水作業は通常かなり大がかりになるのですが、これなら比較的簡単にできるようになると考えています。噴き付けでは大型の機械や広範囲の養生作業が必要になりますが、これならばハンドリングが非常にラクになります。
さらにパネルサイズを足場と同サイズにして作業しやすく工夫しています。パネル同士のジョイントは発生しますがもともと我々はシーリング屋です。超高層ビルのシーリング工事をやっている人間からするとジョイントのシーリングは簡単な話ですから。草場社長 : シーリングは当社オリジナルの100%ポリウレアの接着剤兼シーリング材兼防水補強となっています。釘や接着剤を使わなくてもポリウレアとポリウレアの化学結合で全体が一体化されるのです。
これは我が社独自の技術であり、この技術をさらに幅広く展開させてくれたのがゼットロンだと言えます。
———後編につづく。後編では『たまぼう』および『たまぼうすいばん』についてレポートいたします。
Products
今回ご紹介させていただいた製品
ポリプロピレン硬質発泡体 ゼットロン
製品解説———
ゼットロンは、ポリプロピレン(PP)を主原料とした硬質発泡ボードです。ラグビーボール状の気泡が厚さ方向に整列しているため、軽量なのに圧縮に強く曲げには柔軟で、カッターでも簡単に切断できます。
床暖房基材や畳芯材、自動車の内装から産業資材まで幅広い用途に使用されています。
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1.優れた圧縮強度
独自の気泡構造で高い圧縮強度を実現。
荷重をかけても簡単につぶれず、フローリング下地や壁材の芯材としての強度も充分です。 -
2.軽量性
軽い素材のため、10枚重ねても持ち運びがラクラク。
工事中の移動が少なくなり、時間短縮につながります。 -
3.加工性
カッターナイフで切断できるので、電気工具は必要ありません。
また、溶融張力が高いため過熱による真空成形やプレスによる加工が可能です。 -
4.耐水性
水分・湿気による寸法変化や腐食が起こらないので、水まわりにも安心して使用できます。
これ以降は会員の方のみご利用いただけます
会員登録済みの方
未登録の方
<編集後記>
多摩防水技研株式会社、Nicoldsystem株式会社の皆さま、この度は現場レポートにご協力頂き、貴重なお話をありがとうございました。ゼットロンの使われ方に関しまして、目からうろこです。さらにゼットロンを使って様々な製品展開をしていただきうれしい限りです。今回の取材は前編となります。というのも1回ではお伝えきれなく、前編・後編に分けることになりました。取材の続きは後編で。ご期待ください。