エスロン雨水ハイパーRDの開発意図
近年の気象状況の変化により、短時間に猛烈に降る集中豪雨が頻発化し、洪水や建物内への漏水などの被害が増加しています。建物内における雨水排水設計においても、従来の降雨強度が見直され、雨水排水部材などが大型化される傾向にあります。
従来の配管設計では、雨水排水立て管の本数の増加や大口径化を行い対策をしてきました。
一方で労働者人口の減少や働き方改革など、労働環境の変化への対応の必要性も年々増してきており、雨水排水分野では下記の課題が顕在化してきています。
- 「意匠性」・・・パイプシャフト増大による意匠制限
- 「施工性」・・・配管の大口径化による重量化
- 「経済性」・・・配管や部材の大型化によるコスト高
そこで、当社ではサイフォン原理を利用して排水立て管の本数削減や小口径化が図れ、「意匠性」「施工性」「経済性」等の向上に寄与できる「サイフォン式雨水排水システム」を紹介いたします。
サイフォン式雨水排水システムの概要
当社のサイフォン式雨水排水システムは、アウトレット(ルーフドレン)により空気の流入を抑制し、サイフォンを誘発させ負圧により雨水を引き込み、満流での排水が可能になります。これにより、排水立て管の本数削減や小口径化が実現します。
排水性能の目安として、同一の立管サイズで従来の約6倍以上の最大設計流量に対応できます。(第1表)
第3図
第1表
同一サイズアウトレットで6倍以上の最大設計流量に対応可能
サイフォン式雨水排水システムの部材構成
当社のサイフォン式雨水排水システムの部材は、専用ルーフドレン(第4図(a))とポリエチレン管、ポリエチレン継手(以下PE 管・PE
継手という、第4図(b))で構成されています。
従来ルーフドレンとの構造上の差異は、専用ルーフドレンは流入管部を覆う形状であるため、雨水流入時の空気渦の発生を抑制して配管内の充水率を大きくすることができる点です。
PE
管・PE 継手は、耐腐食性があり、軽量で施工性に優れます。管と継手の接合面は電気融着でポリエチレン樹脂を溶かし、配管を一体化させることで漏水防止が図れます。
(a) 専用ルーフドレン
(b) ポリエチレン管、継手
第4図
サイフォン式雨水排水システムの配管設計
サイフォン式雨水排水システムは、サイフォンにより発生した強い推進力を利用することで、充水率を1.0まで大きくすることができるため、第2表に示す通り、従来雨水排水システムの雨水配管よりも管径を1~3サイズ小口径化でき、重量も従来配管の1/15以下まで軽量化できます。
また、配管経路の最適化が、排水性能確保や経済性向上面で極めて重要であることから、当社では専用ソフトウェアを用いた設計提案を行っています。
第2表
3サイズ小口径化での比較 | 従来配管 (SGP150A) |
雨水ハイパーRD管 (PE管75A) |
---|---|---|
外径 | 165.2mm | 89mm |
重量 | 19.8kg/m | 1.2kg/m |
サイフォン式雨水排水システムのメリット
サイフォン式雨水排水システムにより、配管を省スペース化でき設計自由度が向上し、建物の意匠性が向上します。(第6図)
本排水システムと従来式雨水排水システムの適用例を第3表に示します。(c)従来式と比較して、(a)サイフォン式において、雨水配管を屋上スラブの下の横引管で合流させることで排水立て管本数を6本から2本に削減し、管径を1サイズ小口径化できます。また、(b)サイフォン式においては、排水立て管径を2~3サイズ小口径化し、排水立て管本数を6本から4本に削減することもできます。
また、小口径化及び立て管本数の削減により、施工性や経済性が向上します。建築面積3000m2、高さ10階規模の建物について試算した結果、従来配管の材工費に対しサイフォン式雨水排水システムを採用することで、約25%のコストダウンが可能でした。
第5図
商業施設①
- ・配管の省スペース化
- ・設計自由度の向上
- ・意匠性の向上
商業施設②
- ・共有部に配管し、漏水リスク低減
- ・雨水立て管の口径や配置にとらわれず建物の意匠性が向上
第6図
第3表
(a)サイフォン式 | (b)サイフォン式 | (c)従来式 |
排水立て管 100A、2本 |
排水立て管 75A、4本 |
排水立て管 125A、6本 |
今後の展望
このシステムは、雨水排水立て管の本数削減や小口径化を図れるため、⾬水排水分野が直面してる集中豪⾬の増加や労働者人⼝の減少といった課題の解決の一助になれば幸いです。
サイフォン式雨水排水システム「エスロン雨水ハイパーRD」紹介動画
参考
■ 独自開発の「エスロン雨水ハイパーRD」が「第21回 環境・設備デザイン賞」に入賞。従来の6倍以上の最大設計流用に対応できる雨水排水システムが高評価。
本件に関するお問い合わせ
積水化学工業株式会社 環境・ライフラインカンパニー 建築システム事業部 |
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