未利用エネルギー「下水熱」の活用
再生可能エネルギーの種類
現在わが国の主要なエネルギー源である石油・石炭などの化石燃料は限りがあるエネルギー資源です。これに対し、太陽光や太陽熱、水力、風力バイオマス、地熱などのエネルギーは、一度利用しても比較的短期間に再生が可能であり、資源が枯渇しないエネルギーです。これらは、「再生可能エネルギー」ともいわれます。石油等に代わるクリーンなエネルギーとして、政府もさらなる導入・普及を促進しています。
年中温度が安定しており自然環境の影響を受けにくい未利用エネルギーとして、下水熱が注目されており、関連法令の改正により導入促進がはかられています。省エネ、CO2削減効果が期待できます。
下水温度は大気と比べ、年間を通して安定しており、冬は暖かく、夏は冷たい特質があります。
この下水温度と大気温との差(熱エネルギー)を冷暖房や給湯等に利用することにより節電効果(CO₂削減効果)が発揮されます。
下水道の通るあらゆる場面に使用できます
課題と解決方法
下水熱は下水処理場・ポンプ場での利用が始まっていますが、その他の利用はなかなか進んでいませんでした。
すでに街に張り巡らされている下水道管を利用することで、より広い範囲での導入が可能となりました。
POINT すでに街に張り巡らされている下水道を利用
従来の処理場・ポンプ場限定で導入されている熱エネルギー利用と異なり、街に張り巡らされている下水道管を利用するため、より広い範囲で導入が可能です。また下水道の未利用エネルギーを有効活用することで低炭素まちづくりにも貢献します。
特長
エスロヒート下水熱 管底設置型
下水道管底に敷設した熱回収管を通して下水の熱を熱媒体(水・不凍液)に回収し、この熱媒体を循環させて地上部へ熱を供給します。回収した熱はヒートポンプにより給湯や空調として有効利用します。
エスロヒート下水熱 らせん型
下水道管の更生用部材内部に熱回収管を嵌め込むことにより、下水と直接、熱回収管が触れ、効率的に熱エネルギーを回収します。
回収した熱はヒートポンプにより給湯や空調として有効利用します。
老朽管の更生や耐震化と熱エネルギー回収を同時に行える技術です。
導入効果
省エネルギーや地球温暖化防止への貢献に加え、自治体にとっては低炭素型まちづくりのサポート、利用者にとっては企業・施設価値の向上を実現します。
実績
官民連携により実証研究を行い、国内初の民間商業施設での利用もはじまりました。
仙台市共同研究
地震対策の一環としての老朽管路更生とあわせて下水熱エネルギー利用設備を設置。「実使用管路」としては日本で初めての導入。
民間の商業施設の給湯設備として利用しており、年間30% 以上の電気代節約見込みとなっています。
設置場所 仙台市、民間商業施設
熱利用用途 給湯
導入時期 2013年11月~
既設管径 φ1200mm
更生管径 φ1030mm
設置延長 44.4m
下水道革新的技術実証事業(B-DASH プロジェクト)
国土交通省が公募した「平成24 年度下水道革新的技術実証事業(B-DASH プロジェクト)」における「下水熱利用技術」として、大阪市此花区にある海老江下水処理場の場内において、下水道管を流れる下水から熱回収するための実証を行いました。「管路更生と下水熱回収の組み合わせ」というのは国内初!
設置場所 大阪市海老江下水処理場、下水道科学館
熱利用用途 空調
導入時期 2012年6月~
既設管径 φ900mm
更生管径 φ810mm
設置延長 82.1m
※B-DASHプロジェクトは、(国土交通省)国土技術政策総合研究所の委託研究として大阪市、東亜グラウト工業(株)との共同体で実施しました。