エスロハイパー現場リポート
エスロハイパー現場リポート 2019春 特別号
川越市にて給配水耐震化・長寿命化インタビュー!
川越市上下水道局では口径100mmまで水道配水用ポリエチレン管を採用するとともに、給水用高密度ポリエチレン管を採用し、配給水一体化で耐震化を進めています。同局における耐震化の取組み、ポリエチレン管の採用動向などをお聞きしました。
※川越市データ(平成29年):給水人口 約35.2万人、給水戸数 約15.7万戸、配水管延長 約1,451km
川越市では、平成18年度から耐震管を全面的に採用し、口径50~75mmに水道配水用ポリエチレン管、100mm以上にNS形ダクタイル鋳鉄管を採用しました。それ以前には口径100mm以下にはHIVP(RR継手)を採用していましたが、RR継手以前に採用していたTS継手の漏水が多く発生していたほか、件数は少ないもののRR継手からの漏水も発生していました。
水道配水用ポリエチレン管は、平成12年度頃から区画整理事業などで試験採用を行っていましたが、数々の大地震で優れた耐震性を実証していたことに加え、他都市での採用事例が増えつつあったことなどを踏まえ、平成18年度から本格採用することとしました。そして、平成23年の東日本大震災において地震動による被害がなかったことに加え、当市の試算ではNS形ダクタイル鋳鉄管と比較して総工費で24%のコストダウンを図ることができるという結果を得たため、平成27年度から口径100mmにも本格採用しています。
当市ではアセットマネジメントの結果に基づき、80年サイクル(年間更新率1.25%)の更新を目指して老朽管の更新・耐震化を進めています。また、浄水場から重要給水拠点までの幹線の更新・耐震化を進めていますが、この事業に多額の費用を要していることなどから、年間更新率は1%程度に留まっています。
平成29年度末の配水管延長は約1,450kmですが、このうち口径50mmは484km(約33%)、口径100mmは434km(約30%)と、口径100mm以下が6割超を占めています。このボリュームゾーンについて、コストを抑えつつ更新・耐震化を図るため、水道配水用ポリエチレン管の採用範囲を拡大したわけです。
平成18年度に耐震管を採用した当初から、給水管の耐震化を進める必要性を感じていました。ただ、継手の耐震性に懸念があった水道用二層ポリエチレン管や、コストが高いステンレス鋼管を採用する考えはありませんでした。
当初から給水用高密度ポリエチレン管の採用を検討していましたが、当時は他の水道事業体での採用事例が少なかったことに加え、建築分野では外径の異なる2種類の規格の製品が流通していたため、採用を見送っていました。そうした中で、平成26年度より前橋市さんが2種類の規格を採用し、特に問題なく運用しているという話を参考に、当市でも平成27年度から給水用高密度ポリエチレン管については2種類の規格品ともに採用することを決めました。
採用に当たっては水道施設課(現在の水道課)と給水課(現在の給水サービス課)が連携して検討を進めました。
給水用高密度ポリエチレン管を採用することで、サドル分水栓から先の水道メーターまでの管路をEF融着による一体管路にて構築できますので、給水管の耐震性が向上すると考えています。
確かに給水用高密度ポリエチレン管の導入に合わせて検討しましたが、当時は20mmと25mm分岐しかラインアップされていませんでした。ほとんどの分岐はこの2種類ですが、50mm分岐までの製品がなければ給水装置としては中途半端であり、採用は難しいと考え、当時は採用を見送ったと聞いています。
そうですか。水道配水用ポリエチレン管と給水用高密度ポリエチレン管の採用に当たっては、耐震管であることのほか、長寿命化が可能であることも重要でした。積水さんのご指摘の通り、現在のサドル分岐部にはネジ継手が残っていますし、耐用年数についても高密度ポリエチレン管と同等とはいえないと思います。NS形ダクタイル鋳鉄管の路線に鋳鉄製サドルを使用する場合に関しては特に耐用年数での差異は問題にならないと思いますが、本管に水道配水用ポリエチレン管を採用している路線において、管路全体の耐震性と寿命が向上するのであれば検討すべき課題です。
県内でも越谷・松伏水道企業団、春日部市、お隣の坂戸、鶴ヶ島水道企業団などでJIS外径の給水用高密度ポリエチレン管やEFプラグ付サドルを採用しているとのことですので、そうした情報も参考にしながら今後検討していきたいと思います。
クランプ機能付きのEF継手が一部の工事業者から好評だと聞いていましたので、そうした情報をお伝えしました。施工性が向上する製品は大歓迎です。
川越市では2次側の給水施設においても、給水用高密度ポリエチレン管が使用できます。しかし、戸建て住宅の場合にはメーターから先は硬質塩ビ管のTS接合になっているケースが多いです。窓口で給水用高密度ポリエチレン管が使用可能であると伝えることもありますが、もったいないですね。
また、川越市では第一止水栓のパッキンの老朽化に起因する漏水が多発しているため、原則として第一止水栓は廃止も検討しています。しかし、越谷・松伏水道企業団さん向けに第一止水栓の両端をEF融着できる製品も品揃えされたと聞きましたので、今後廃止か採用について検討していきたいと考えています。
ダクタイル鋳鉄管メーカーから、GX形ダクタイル鋳鉄管とNS形ダクタイル鉄管(E種管)以外は再来年度から受注生産に移行するという話がありました。繰り返しになりますが、当市では口径150mm以上にNS形ダクタイル鋳鉄管を採用していますので、この動きにあわせて今後、管種の見直しを含めて検討していこうと考えています。
口径100mm以下に採用している水道配水用ポリエチレン管は、布設後に漏水は発生しておらず、特に問題はありませんし、耐震性を有していますので、口径150mmの採用管種についてはGX形ダクタイル鋳鉄管と比較検討していきたいと考えています。なお、NS形ダクタイル鉄管(E種管)については3種管よりも管厚が薄く、ポリスリーブで被覆をしても短期間で腐食の懸念がありますので、将来のことを考えて採用する予定はありません。
先ほどお話した通り、現段階では、給水用高密度ポリエチレン管について、二つの規格を採用しています。工事申請書にメーカー名を記載してもらい、マッピングシステム上にファイリングしている竣工図にメーカー名を記載するなど、しっかりと記録を残していれば今のところは特に問題はありませんが、将来の補修などを考慮すると、どちらかの規格に統一していくことが求められます。
今回、25mmサイズまでは複数の会社で製造していることもわかりました。他都市の動向を参考にしながら、どちらの規格を採用すべきか判断したいと考えています。
当市における管路の更新・耐震化は遅れていますし、昭和40~50年代に布設した塩ビ管が一斉に老朽化していきますので、今後も最小のコストで最大の効果を発揮できるよう、水道配水用、給水用ポリエチレン管製品群などの採用拡大検討を含め、費用を最小限に抑制しつつ、更新・耐震化と長寿命化を進めていきたいと考えています。
積水化学工業は2019年2月、金属製クランプに替わる取付けが簡単な樹脂製クランプ「かんたんクランプ」を発売しました。「かんたんクランプ」のテスト施工にご協力いただいた、川越市の指定給排水工事事業者である有限会社島田水道工業の島田正悟代表取締役にもお話を伺いました。
元々のアルミ製のクランプも慣れてしまえば問題なく施工することができていましたが、「かんたんクランプ」はその名の通り簡単に接続でき、取り外しも不要です。当社はEF融着機を2台所有していますので、冷却時間を待たずに次々と融着することができるようになり、施工性が良くなったと思います。特に丘付けで多数のプレハブ融着を行う場合などは快適です。実際に下請けの工事業者からも施工性が良いと非常に好評でした。
当初は掘削穴の中で融着していましたが、給水用高密度ポリエチレン管は融着後に生曲げ配管が可能ですので、丘付け施工してから布設していました。このため、特に問題はありませんでしたが、「かんたんクランプ」により、狭小スペースでの作業性がより一層良くなったと思います。
他社製品は固定用ねじで仮組をしてEF融着を行いますが、ねじで固定するが故に、EF融着を失念してしまう恐れがあるように思います。また、他社の製品は4カ所をねじ止めする必要があります。電動工具ではネジ部を破損する恐れがあるため、すべてドライバーでねじ締めする必要があります。「かんたんクランプ」の仮止めは2カ所のみですので、その点も優れていると思います。
感覚的にねじで仮止めした方が楽という工事業者もいると思いますので、一度「かんたんクランプ」を使ってもらえれば、その良さがわかるような気がします。両方の製品で施工をした下請けの工事業者からも非常に好評でした。
メーカーへの要望になるかわかりませんが、川越市では現在、外径が異なる2種類の規格の製品が採用されています。現場が混乱しますので、なるべく早く規格を統一していただきたいと思います。 実際に、配管資材の販売業者が規格の違いを把握できておらず、直管と継手で異なる規格品が納入された現場がありました。また、当社は緊急時の漏水修繕を行っていますが、通報を受けて現場に急行した際、どちらの規格の製品が埋設されているかわからなければ迅速に対応できません。上下水道局のマッピングシステムを見れば、どちらの規格品が使用されているか把握できるそうですが、上下水道局の勤務時間中に漏水が発生するとは限りません。修繕の部材も2種類を在庫しておく必要もあります。
現在は給水用高密度ポリエチレン管の採用から日が浅いため、漏水は発生していませんが、将来的には様々な維持管理が発生する可能性があります。非常時に漏水が修繕できずに困るのは水道利用者です。早急な対応をお願いしたいと思います。